2010年1月17日日曜日

日航、国民負担440億円

1月16日付け朝日新聞の報道では、今回の会社更生法適用により、昨年6月に実施された「危機対応業務」に基づく融資総額670億円(政府保証分)の83%に当たる440億円も債権放棄の対象となる。問題は、① 昨年6月に実施された融資がDBJの経営者及び政府が国民に対する背任行為に当たらないかどうか(誰も俎上に上げていないが)、要すれば、昨年6月の段階で分かっていたことではなかったのか、単なる時間稼ぎに使った額が440億円は小さな金額ではない。 ② 2008年度に実施されたDBJによる優先株引受200億円程度(総額1500億円のうち13%)もパーになること、③ それらを承知で、政府(DBJ)は今回の金融支援1400億円(返済順位は更生債権よりも上位)を実施すること。失敗した場合にはまた国民につけを回すこと。 ④ 企業再生支援機構がいくら出資するか分かりませんが、半分の100億円は政府が出していますが、それが毀損するようなことがあれば、これも国民の負担です。 ⑤ なぜANA(だって、1兆4千億円の負債がある)があるなか、JALを守る理由は何か?ナショナルフラッグは1社で十分ではないか。今後過当競争が予想され共倒れにならないか? ⑥ この期に及んでマイレージを守る必要があるのか?(米航空会社破綻時にはマイレージは跳びました) 

さて、これらの問題を解くカギとしては、やはりJALの企業価値は一体いくらなのかというのが重要になると考えます。2009年3月期の営業キャッシュフローは300億円前後(金融危機前で1600億円)でしたので、倍率で考えれば、現時点でのEVはせいぜい1500-3000億円。更生債権と今回の金融債権を考慮すれば、エクィティ価値はあるかないかのレベル。もう一度申し上げますが、企業再生支援機構がいくら資本注入するかわかりませんが、現時点のバリューエションではエクィティにほとんど価値は認められません。一方、金融危機前の水準に戻るには数年から5年程度は要するでしょう(それに失敗すれば金融支援1400億円だってどうなるかわかりません)。それを踏まえれば、PEファンドのイールド目線では、数千億円のエクィティ価値は見込めるかもしれません。それであれば、スポンサーはシナジー効果の高いANAにするのがもっともらしかった。今は繋ぎで企業再生機構なのか?デルタ及びアメリカンからの出資を拒否したのは、その道がとざされるからか、いろいろと良からぬことを考えてしまいそうですので、この辺で止めておきます。

オープンスカイ等の付加価値(外国エアラインとのシナジー)により将来価値は増すのでしょうが、ANAとJALが共倒れにならないよう、優勝劣敗という自由主義社会にあるルールに則るべきではないかとしみじみと感じてしまいます。日本経済が低迷している理由の一旦はこのような社会主義的な企業再生がまかり通ってきたことではないでしょうか?

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