香港政府と香港金融管理局(HKMA、中央銀行に相当)は11月19日、不動産バブルの抑制に向けた対策を相次いで打ち出した。HKMAの対策は金融機関 に住宅ローンの抑制を求める内容で、ここまでは市場もあらかた織り込んでいた。業界を驚かせたのは、政府が打ち出した増税策だった。
曽俊華財政官が突然発表した対策は、住宅を短期間に転売する場合、最大で購入価格の15%の「特別印紙税」を徴収するものだ。香港の不動産価格は年初から 50%程度上昇しており、何らかのバブル抑制策が必要だとの意見は社会全体で共有されていた。だが政府が発表した増税策は大方の予想をはるかに上回ってい た。連席会議のメンバーは「明らかに行きすぎ。関係者1万人が失業する」と悲鳴を上げる。
同会議によると、バブル抑制策を発表した19日以降、住宅取引は8割も減少した。バブル抑制策は“劇薬”として効果を発揮しているかにみえる。
だが株式市場は不思議と冷静だ。香港を代表する財閥系の不動産開発業者「長江実業」「新鴻基地産」の株価は、バブル抑制策の発表後もほとんど下がっていない。株式市場では「バブル抑制策の効果は長続きしないだろう」との見方すら浮上している。株式市場の強気を支える根拠が「規制の抜け道は必ず見つかる」との意見だ。市場では様々な増税回避策が議論されている。なかでも話題になっているのが、不 動産売買を株式会社の譲渡と偽る方法だ。あらかじめ株式会社を設立し、その会社の名義で住宅を購入したうえで、株式会社を丸ごと転売する方法だ。住宅の所 有者は株式会社のままで変わらないため、特別印紙税の支払いを回避できる可能性があるという。
この手法 がはたして有効なのかどうかは微妙だが、投機筋が香港での不動産投資をあきらめるとの見方は少数派だ。「住宅市場から逃げ出した資金が商業不動産に流れる だけだ」との見方も根強い。先進国の金融緩和を背景に、過剰流動性が金融市場にあふれる状態に変化はなく、1カ所でバブルを押さえ込んでも、別の場所でバ ブルが発生する懸念はぬぐえない。
曽財政官はバブル抑制策の発表からわずか10日で「必要な場合は新たな政策を導入する用意がある」と、立法会(議会)で話した。市場の関心は早くも「次の一手」に移り始めている。(日経ヴェリタス)
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