2010年8月24日火曜日

野口悠紀雄氏の見解

著書「世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか」から、特筆すべきポイントは、「失われた15年」の原因だ。一般的には、銀行の「貸し渋り」と貨幣供給の不足や需要の不足による「デフレ」とされているが、一つにはアジア新興国において、安価な工業製品が生産されるようになったことだ。このため、工業製品の価格が下落した。(一方、サービスの価格は上昇か横ばいであった。→したがって、貨幣供給不足・需要不足が原因なら物・サービスの価格が一律に下落するはずだ)。

第二に、日本がこれらの諸国と工業製品の生産で競争することになったため、国内賃金が新興国賃金にさや寄せされて下落した。これらは2000年代に、外需依存の景気回復で古い産業構造を温存したためだ。(現に、90年代後半以降、実効為替レートの円安進展と賃金の低下が並行して進んでいる)

したがって、今起こっている円高(と株安)は「失われた15年」を安易に凌いだ政策に対する巻もどしと考えた方がよい。相場が産業構造の変革を求めており、とことん円高で二次産業の空洞化を邁進。一方、サービス産業で経済復活が果たさなければ、デフレは続き財政破綻、「さらに失われた15年」が間近に見えてくる。

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